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    • 公開日2024/04/20
    • 更新日2024/04/20

    ヤミーさんに教わる!あの調味料のとっておきの使い方Vol.28|ウスターソース

    世界を旅する料理研究家として、雑誌やテレビを中心に活躍している、Nadia Artistのヤミーさん。主宰する料理教室「Yummy's Cooking Studio」では、世界の料理を気軽に学べると人気です! そんなヤミーさんに世界中の調味料のとっておきの使い方を教えてもらうこの連載。第28回は「ウスターソース」。ぜひチェックしてみてくださいね。

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    ヤミーさんに教わる!あの調味料のとっておきの使い方Vol.28|ウスターソース

     

    うま味が凝縮!ウスターソース

    ウスターソースは、野菜や果物に香辛料、酢、砂糖、塩を加えた液体調味料。生まれはイギリスのウスターシャー州ウスター市。日本でも売っている「リーペリン ウスターソース」が、元祖ウスターソースです。

    どのように誕生したかについては諸説あります。ウスター市の主婦が、あまった野菜や果物をスパイスと一緒に壺に保存しておいたところ、野菜や果実が溶け合った美味しい液体になった、という説。

    また、インドから帰国したイギリス人が、スパイスを扱っていた薬剤師のジョン・リーとウィリアム・ペリンズに、インドで美味しかったソースの製造を依頼。レシピ通りに野菜にアンチョビや香辛料を加えるなどして作ったら匂いが強烈で、地下室(または土の中)に入れておいたところ、忘れたころにすばらしいソースができていた、という説。

    いずれにしても、野菜や果物にスパイスを加えて放っておいたら、美味しいソースになったという、偶然の産物だったようですね。

     

    日本独自の味に進化したウスターソース

    リーさんとペリンズさんの作った「リーペリン ウスターソース」は、1837年に発売後大人気となり、あっという間にヨーロッパ中に広がり、今では世界中で使われています。

    『にっぽん洋食物語大全』(小菅桂子著、ちくま文庫)によると、日本でのウスターソースの歴史は、江戸時代に始まったようです。安政元年(1854年)に今のキッコーマンによって製造が試みられましたが商品にはならず、本格的に製造が始まったのは明治になってからとのこと。明治27年(1894年)に、大阪の越後屋産業が「三ツ矢ソース」を発売。その後、大阪の山城屋が「錨印ソース(現イカリソース)」を発売と、関西で次々とウスターソースが発売されています。

    東京では遅れて明治39年(1906年)に、「MTソース(現ユニオンソース)」、同じころに現在のブルドックソースが発売されています。明治33年(1900年)には明治屋がリーペリンをはじめ、さまざまなメーカーのウスターソースを輸入しており、そのころに日本でのソース文化が始まったと言えます。

    各社ともイギリスのウスターソースをお手本としていますが、レシピが秘伝であることと材料の入手の難しさなどから、日本独自の味に進化しており、味わいが異なります。次第にとんかつソース、お好み焼きソース、中濃ソースなど、ウスターソースから派生した日本生まれのソースも登場。洋風のイメージのソースですが、もはや日本の調味料ともいえます。

    そういうわけで、日本と元祖のイギリスではウスターソースの使い方も違います。日本ではコロッケやとんかつなどの揚げ物にかけたり、お好み焼きや焼きそばの味付けに使われるのに対し、イギリスでは主に肉料理に使います。他に「ウェルシュ・レアビット」というチーズトーストや「ブラッディ・マリー」というカクテルの風味付けに使うのも一般的です。

    チーズとソース、カクテルにソース、私たち日本人からすると、ちょっと想像できない組み合わせですよね。同じ「ウスターソース」といっても、日本人とイギリス人の間では、だいぶ印象が違いそうです。今度イギリス人に会ったら、ウスターソースについて談義するのも、調味料の違う面が見えて面白そうですね。

     

    日本の代表的なソースの特徴

    ソースにはさまざまな種類があるので、どんな違いがあるのか、代表的な3種類について比べてみました。

    【ウスターソース】

    野菜や果実の繊維質が少なくサラリとしており、ほどよい辛さがある。揚げ物にかけるとさっぱりと感じる。

    【中濃ソース】

    ウスターととんかつの中間にあたるソースで、ほどよいとろみと甘みがある。辛味が少ないので、幅広い料理に使える。

    【とんかつソース】

    果実を多く使用しているので繊維質が多く含まれ、とろみと甘みが強い。とんかつのほか、お好み焼きにも向いている。

    また、リーペリンのウスターソースは、日本のものより酸味とスパイシーさが強く、さっぱりとしていて最後に辛味が口に残ります。

    ウスターソース

     

    ウスターソースを使ったとっておきのレシピ

     

    濃厚な味わい!ウェールズのうさぎという名のチーズトースト

    濃厚チーズトースト「ウェルシュ・レアビット(ラビット)」https://oceans-nadia.com/user/14317/recipe/117948

    イギリス伝統のパブメニュー。イギリス式チーズトーストで、うさぎではなくウスターソースが入っています。チーズトーストというと、日本では朝ご飯や軽いランチをイメージすると思いますが、私の大好きな映画「ゴスフォード・パーク」では、貴族の晩餐のメインディッシュに登場。ウスターソースの奥深さとスパイシーさを加えたチーズソーストーストは、濃厚でリッチな味です。

    ●詳しいレシピはこちら
    濃厚チーズトースト「ウェルシュ・レアビット(ラビット)」

     

    ウスターソースがお酒に入った!トマトカクテル

     トマトカクテル「ブラッディ・マリー」https://oceans-nadia.com/user/14317/recipe/481169

    ウスターソースを加える、ウォッカとトマトジュースのカクテルです。ウスターソースをお酒に入れるとは! はじめて知ったときは衝撃でした。タバスコやセロリソルト、こしょうを入れるなどさまざまなバリエーションがありますが、ウスターソース入りはうま味とスパイシーさが加わって手軽に美味しくなるのでおすすめです。できればイギリスの「リーペリン ウスターソース」で作ってください。

    ●詳しいレシピはこちら
    トマトカクテル「ブラッディ・マリー」

     

    いつもの調味料で作れるハッシュドビーフ

    ルー不要!いつもの調味料で「ハッシュドビーフ」https://oceans-nadia.com/user/14317/recipe/481170

    フライパンに材料を入れ、調味料をかけて炒め、蓋をして少ない水分で蒸し煮にするだけの簡単時短ハッシュドビーフです。市販のルウもデミグラスソースも不要。調味料はトマトケチャップとウスターソース、それに赤ワインがあればOK。まるで長時間煮込んだような味わいになるから驚きです。

    ●詳しいレシピはこちら
    ルー不要!いつもの調味料で「ハッシュドビーフ」

     

    イギリスの家庭料理、ミートパイ

    イギリス式ミートパイ「コテージパイ」https://oceans-nadia.com/user/14317/recipe/481171

    ひき肉の煮込みをマッシュポテトで覆って焼いた、イギリスの家庭料理。「パイ」とつきますが、パイ生地は使いません。なめらかなマッシュポテトの中からうま味たっぷりのお肉が出てくるのですが、その味付けのポイントはウスターソース! レンジでお肉の煮込みを作りますが、ウスターソースのおかげで味に深みが出ます。

    ●詳しいレシピはこちら
    イギリス式ミートパイ「コテージパイ」

    私は北関東の茨城県出身。ソースといえば中濃ソース、でした。料理の仕事をするようになってから知って驚いたのですが、関東では中濃ソース、関西ではウスターソースととんかつソースの消費が多いそう。ソース全体の消費量は関東より関西が多く、関西の家庭では数種類のソースを常備していることが多いようです。

    確かに関西には、たこ焼きやお好み焼きなどソースをたくさん使う郷土料理が多いですし、日本のウスターソースが大阪から生まれていることを考えても、これは当然のことでしょう。

    みなさんはどのソースをよく使うでしょうか? 調べると、面白い食文化の歴史があるかもしれないですね。

    これまでの連載はこちら!

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    ヤミー
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    ヤミー

    世界を旅する、料理研究家。輸入食材店に勤務しながら料理ブログをスタートして話題となり、現在はテレビや雑誌、企業のレシピ開発で活躍の他、ベストセラーとなった著書多数。近著に『ヤミーさんのおうちで世界一周レシピ』『ワンボウルクッキング』(いずれも主婦の友社)。NHK「きょうの料理」や、冠番組「ヤミーのレシピ帖」(長野朝日放送)などのテレビ出演、少人数制料理教室「Yummy‘s Cooking Studio」を主宰するなど、輸入食材の知識を活かして、世界中の料理を日本の家庭で作れる簡単レシピにするのが得意。 最近は日本一のカルディマニアとしてもテレビやラジオ、雑誌などでも活躍している。

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